スタートアップ時期の葛藤とその乗り越え方
大企業のサラリーマンだった普通の青年が、500万円貯金して会社を辞め、自転車で世界一周の旅に出る話。
安かったし、単にタイトルに惹かれて購入したのですが、これはアタリ本でした。ということで、是非ともここで紹介しようと筆をとった次第です。
わたしはいわゆる「成功者」の本を年間100冊以上読みましたが、
どの成功者も、最初、つまりスタートアップの時期は飛行機に似ていると思っています。
①飛行機が滑走路に向かってゆっくりと進み、
②直線コースに入ってグングンとスピードを上げ、
③やがてふわりと浮かび、
④その後は旋回しながら一気に高度10,000メートルに達する。
⑤上空には障害物はなく、まっすぐ、最短距離で目的地まで飛んでいく。
もっとも「時間」が必要なのが①、
もっとも「エネルギー」が必要なのは、②です。
多くの人は、①で滑走路までたどり着けずに止まってしまうか、②で機体が浮かび上がるスピードに届かず力尽きてしまう。でも、一度機体が浮かび上がってしまえば、あとは風の力で飛んでいくことができます。⑤では、じつはあまりエネルギーは必要ないのです。
①~③の「スタートアップ」が一番大変なんです。
この本には、①~③、そして④、⑤に至るまでの全ての工程、葛藤、挫折などが、ものすごくなまなましく書かれています。
特に、いま現在①、②の段階にいる人たち全てにおススメしたいと思います。
◆こんな人におススメ
・平凡で退屈な人生に違和感を感じている人
・やりたいことがわからない人
・やりたいことが漠然としすぎていて何をすればいいのかわからない人
・とりあえず何かやり始めたけど、このまま進んでいいのか自信がない人
おススメする理由
それは、「迷い」がすごく正直に書かれているから。
例えば、出発前~スタート地点到着後までに様々なトラブルや障害に見舞われます。
思いきった決断をした人はわかると思いますが、非常に不安定な精神状態(じっとしていられないほどワクワクしたかと思えば、ベッドから一歩も出られないくらい怖くなったり。)の中、神様が意地悪をするみたいに「元いた場所に引き返させよう」とする力が働きます。
「10日後に退職、世界一周の旅まであと1ヶ月を切った時に、持病の血尿が出て入院を余儀なくされる」「病院で占いがあたるオバちゃんに順風満帆のサラリーマン人生を送ると予言される」「空港から自転車を押してみると、重くてなかなか進まない」「現地に着いて最初に道を聞いた女性に金を要求される」「英語が聞き取れない」「出発の日、起きたら夕方の4時だった」
著者も、アメリカ(出発地点)の最初の宿に着いてから出発するまで、4日間足踏みしていた経験を書いています。
P26
ベッドに入って昂揚した気分が静まると、しだいに胸のなかから黒いモヤモヤしたものが広がってきて、身体が震え始めた。広大な大陸をひとり、自転車で走っていく。出発前はロマンにあふれていたそのイメージが、いまはただひたすら恐ろしいものに変っていた。町から一歩出れば途方もなく広い森が始まる。そこには熊もいるのだ。拳銃だってあふれているのだ。
P27
今日こそはぼくも出発しようと決めていたが、いつまでもベッドから出られない。無人の大地に自転車でこぎだすところを想像すると、本当に恐ろしくなってくる。強盗や熊に襲われるシーンが、払っても払っても追いかけてくる。
どうしてこんなことを始めてしまったんだろう? 毛布に入ったまま、目の前の壁を見つめる。自分がてんで不向きなことをやろうとしている気がした。あのままサラリーマンを続けていたほうがよかったんじゃないだろうか。実際、あの生活に不満があったわけじゃないのだ。
ここでぐっと堪えて、さらに一歩踏み出すこと。
「もう、行くしかないんじゃ!」
そうすれば、恐怖や不安は消えていく。
よくある旅行記のように素人が書いたペラペラの文章ではなく、読みやすく、臨場感あふれる文体でした。銃を突きつけられたり、ジャングルにそびえるピラミッドに立って風を感じたりと、実際に体験しているような感覚を味わえます。
誰でも迷って当然。怖くなって当たり前。
でも、覚悟を決めて歩き出せば、必ず報われる。
そういう大切なことを教えてくれる本です。
※だらけてしまう人には、この本を先に読んでもらった方が良いかも。
「だらける自分」に失望する必要は全くありません。
「恒常性維持機能(ホメオスタシス)」というものによるただの生理現象です。暑い日に汗が出るのと全く同じ原理です。さらに、どうすればだらけなくなるかも丁寧に解説してくれています。
くわしくはこちら↓