三ツ星★★★人生

勢いで会社を辞めた元女SEのその後

読むだけでモヤモヤとした不安が解消する小説

超長編小説「屍鬼」を読みました。

 

「なんかモヤモヤしている」

「不安でたまらない」

「自分はひとりぼっちだと感じる」

「毎日がつまらない。不満はないけど満足もしてない」

「永遠に生きたい」

という人におススメの作品です。

 

アニメや漫画になっているのでそっちを知っている、という人にも、ぜひ原作を読んでもらいたいです。アニメや漫画はエンターテイメント性に力を置いていて、原作をわかりやすくしたものだと思います。

原作、漫画、アニメを比較してみても、やはり原作の「深さ」は圧倒的です。 

 

読むだけで、漠然とした不安・恐怖が解消されます

思うに、「恐怖」や「不安」って、「わからない」ことに起因しているんじゃないかと。

例えば、漠然と将来が不安になるのも未来の事が予測できないからだし、恋愛で片想いしている相手に告白するのが怖いのも相手の気持ちがわからないからです。わからないものは怖い。本来的に、動物はそういう風に出来ているんだと思います。

 

これまで自分の中でモヤモヤしていたものが、明確に活字にされてしまった!という小説です。身につまされる部分が多くて読むのが辛くなることもありましたが、一方で、これほど得られるものが多い小説も久しぶりだな、と思いブログに残しておこうと思い立った次第です。

自分の存在が否定されることほど辛いことはないもの。否定から逃れようとして、周囲の期待におもねる。彼は肯定されるのだけれど、彼の中には周囲におもねることなく生きてみたいという渇望が潜んでいて、ずっと解けない。自分自身として生きてみたい、それを肯定してほしいという周囲に対する期待が、お父様の中にはなかったかしら。なのに期待するものは得られない。そこで自分自身であることを受け入れてくれない連中なんて要らない、と言ってしまえればいいのだけれど、そのためには周囲の肯定など必要としないほどの自己肯定が必要だわ。けれどもお父様はかつて一度たりとも自分自身であったことがなかった。そんな人に、周囲の否定に揺らがないほどの自己肯定なんてできるものかしら。

 

屍鬼(下)P.524より抜粋 

親の期待におもねって良い大学に進み、(初任給が)良い会社に入ったけれどずっとモヤモヤしていて、最終的には勢いで会社を辞めたわたしには、かなり共感した部分があります。もちろん、他にも素晴らしい!深い!と感じる箇所がたくさんあったのですが、全部書き出しているとキリがないので、抜粋だけ。

 

とにかく読んでいて、「あぁ、だから不安だったんだ」「だから怖くて一歩も動けなくなることがあるんだ」って、すごく腹落ちする感覚でした。

 

不安の理由がわかって、自分で認め、受け入れてしまえば、不安は消えます。少なくとも、「なんとなく不安」ということはない。怖くなっても、「〜だから、わたしはいま怖がっているんだ」と認識することが出来るようになります。すると、逃避ではなく、解消するために前進することにエネルギーを当てられるようになるわけです。

 

屍鬼」の原作を読んで、一番良かったなぁと思ったのはこの点です。

 

娯楽として優れているだけでなく、読むと頭が良くなる!?

 三人称一元描写で書かれており、様々な登場人物(150人超)の視点、考え方を楽しむことができます。同じ状況に置かれても、登場人物によって異なる考え方をし、異なる行動を取ります。わたしが思うに、この登場人物の多さもこの作品の魅力です。

 

冒頭で引用したような文章に共感するわたしのような人も居れば、全く違う部分に心を動かされる人もいて、千差万別だと思います。が、おそらく誰が読んでも、何かしら心に刺さる、引っかかる部分のある作品だと思います。

 

このバリエーション豊富な登場人物の中に、自分、もしくは自分の周りにいる人(親、子、親戚、恋人、友人)の断片が見えたりします。あぁ、こういう人親戚のおじちゃんにいたなぁとか。あの人も、あの時こういう風に感じたのかもしれないなぁとか。単なるフィクション、お話の中の世界ではなく、自分の現実との接点(フック)が多い。だからこそ、現実に応用しやすく、これまでの自分の経験に結びつけやすいんですね。

 

多くの「別の視点」を知ることで、自分の周りで起きていた(もしくは今後起きる)事象をより立体的に理解することができるようになります。苫米地先生風に言うところの、「抽象度が上がる」でしょうか。映画マトリックスの撮影方法、バレットタイムで広く知られていますが、似たようなことが脳で起こりやすくなる感じ。

バレットタイム英語Bullet-time[1])はSFXの一つで、被写体の周囲にカメラをたくさん並べて、アングルを動かしたい方向にそれぞれのカメラを順番に連続撮影していき、被写体の動きはスローモーションで見えるが、カメラワークは高速で移動する映像を撮影する技術、またはその効果を指す。タイムスライスマシンガン撮影 ともいう。

 Wikipediaより抜粋

 

このように視野が広がり、視点が高くなると、一つの情報から「他のあらゆること」がわかるようになります。つまりは、物事のつながりが瞬時に知覚できるようになります。IQが高い人ほど、この抽象化能力が高いと言われていますね。

 

例えば、数学の方程式。

公式を覚えてしまえば、変数に当てはめる数字を変えるだけでいろんな問題が解けてしまうのと同じです。パターン認識が一度出来てしまえば、認知するスピード、理解力が格段にアップするわけです。優秀な経営者、有名な知識人、天才と呼ばれる人たちも、たくさんの本を読むことで、この抽象化能力を鍛えているのだと思います。

 

・・・あと、難しい漢字や知らない語彙もたくさん出てくるので、そういう意味でも勉強になります(笑)

さいごに

さて、わたしの稚拙な表現でこの作品の良さを伝え切れたとは思いませんが、、、この記事をきっかけに、「ちょっと読んでみようかな」という気持ちになっていただければ良いなと。

そして読むことで、わたしのように「自分の中にあるモヤモヤした気持ち」を理解し、前に進むエネルギーに変換できた! となっていただけたなら最高です。