賃貸と持家、どっちが得か?
「持家と賃貸では、さまざまな諸経費を考慮すればそれほど変わらない」論は有名ですが、著者は以下のような理由を上げて、「持家の方が絶対得である!」と主張しています。
①固定費・メンテナンス費は、持家も賃貸も変わらない。(賃貸は家賃に上乗せされているだけ)
②持家はいざというときに資産になる。
③持家は造りがしっかりしている。(賃貸物件はボロい、チャチ)
④持家は住宅ローン控除を受けられる。
別に異論があるわけではありませんが、著者の意見はちょっと持家に寄り過ぎているように思います。
持家のメリットばかりで、賃貸のメリット、持家のデメリットが一切述べられていないので、これでは比較したことにならないのでは・・・?と感じざるを得ません。
一つずつ見ていきましょう。
①固定費、メンテナンス費は、持家も賃貸も変わらない。
(賃貸の場合は家賃に上乗せされているだけ。
→これは納得。大家さんは毎月の家賃で元を取っている&利益を得ているはず。
②持家はいざというときに資産になる。
賃貸の場合、長生きすればするほど不利になる。(払い続けなければならないから)
→確かにそうですが、同じ様に「ローンを払い続けている間は負債」であることを、ここでは強調しておきます。
昔と違い、「20年前に想定した通りローンを払い続けられる」という前提が簡単に崩れる時代になってるので、この点には十分注意すべきです。
大量リストラ・人員整理、実力主義・成果主義の増加、年功序列の崩壊・・・
何かあったとき、ローンがあったら会社も辞められないし、引っ越しもできません。
③持家は造りがしっりしている。(賃貸物件はボロい、チャチ)
→分譲賃貸とかあるので、一概には言い切れないでしょう。
また、新築の賃貸だったら、10年前の分譲よりよっぽどしっかりしてることもあります。建築に限りませんが、技術は日々進歩しています。
④持家は住宅ローン控除を受けられる。
ローンを組んで家を買った場合、ローン残高の1%の税金を還付する、という制度。
4000万円のローンを組んだら、「最大で」40万円帰ってくる。
→これは、20年以上ローンを払い続けることが可能で、かつ、その家に一生住むことが確定している人達に限った話。
※今確定していも、数年後には災害とかでなくなるかもしれないけど。
個人的には、賃貸の方が得だと思う。
本書では述べられていませんでしたが、賃貸の最大のメリットは、「家(土地、ローン)に縛られないこと」です。
いつでも好きな時に解約できるし、一度買ったら20年間ローンを払い続けなければならない、という制約もありません。
私は、年に(最大で)40万円税金が還ってくることよりも、
「いつでも別の家(場所)に住み替えられる自由」の方が、
圧倒的に価値が高いと思っています。
※単純に、欠陥住宅だったりご近所に変な人が越して来たりしても、
「逃げられない」というのはかなりのリスクだと思うのですが。。。
価値観の違いも大きいと思いますが、ちょっと正気の沙汰とは思えません。
著者は、税務署員も持家率がほぼ100%である、という事実から、
「税務署員は持家の方が得だと知っているから」と述べています。
いかにも税務署員の古典的な思想が匂ってきますが、
ハッキリ言って、税務署員も著者も視野が狭すぎると思います。
著者の理論は「ローンは(100%)期限通りに完済できる」という前提の上に成り立っています。この前提が崩れることを全く考慮していません。
こういう投資の仕方は世界ではNGです。
「不確定な未来」に対し、リスクを分散するためにポートフォリオを組むのは、投資の世界では常識です。行動経済成長まっただ中の日本は、「20年後にもらえる給料」はほぼ確定していたのでしょう。。。
しかし、今は違いますよね?
特に、20代、30代の若い世代は不安定です。
「未来は不確定で、10年先は予測不可能である」という前提に立つと、
「持っている資産の量(数)」よりも、
「変化に柔軟に対応できる身軽さ」の方が重要であると思います。
ちなみにこの本は、タイトルに惹かれて購入したのですが、
家族がいたり、いろんな保険を払っている人向けに書かれたものと思います。
私のように一人で生きている(生きていこうと思っている)人、
いずれ日本を脱出する気満々の人にとっては、
読んでも得られるものが少ないかもしれません。