三ツ星★★★人生

勢いで会社を辞めた元女SEのその後

賃貸と持家、どっちが得か?

 

「持家と賃貸では、さまざまな諸経費を考慮すればそれほど変わらない」論は有名ですが、著者は以下のような理由を上げて、「持家の方が絶対得である!」と主張しています。

 

①固定費・メンテナンス費は、持家も賃貸も変わらない。(賃貸は家賃に上乗せされているだけ)

②持家はいざというときに資産になる。

③持家は造りがしっかりしている。(賃貸物件はボロい、チャチ)

④持家は住宅ローン控除を受けられる。

 

別に異論があるわけではありませんが、著者の意見はちょっと持家に寄り過ぎているように思います。

 

持家のメリットばかりで、賃貸のメリット、持家のデメリットが一切述べられていないので、これでは比較したことにならないのでは・・・?と感じざるを得ません。

 

一つずつ見ていきましょう。

①固定費、メンテナンス費は、持家も賃貸も変わらない。

(賃貸の場合は家賃に上乗せされているだけ。

→これは納得。大家さんは毎月の家賃で元を取っている&利益を得ているはず。

 

②持家はいざというときに資産になる。

賃貸の場合、長生きすればするほど不利になる。(払い続けなければならないから)

→確かにそうですが、同じ様に「ローンを払い続けている間は負債」であることを、ここでは強調しておきます。

 

昔と違い、「20年前に想定した通りローンを払い続けられる」という前提が簡単に崩れる時代になってるので、この点には十分注意すべきです。

大量リストラ・人員整理、実力主義成果主義の増加、年功序列の崩壊・・・

何かあったとき、ローンがあったら会社も辞められないし、引っ越しもできません。

 

③持家は造りがしっりしている。(賃貸物件はボロい、チャチ)

→分譲賃貸とかあるので、一概には言い切れないでしょう。

また、新築の賃貸だったら、10年前の分譲よりよっぽどしっかりしてることもあります。建築に限りませんが、技術は日々進歩しています。

 

 

④持家は住宅ローン控除を受けられる。

ローンを組んで家を買った場合、ローン残高の1%の税金を還付する、という制度。
4000万円のローンを組んだら、「最大で」40万円帰ってくる。

 

→これは、20年以上ローンを払い続けることが可能で、かつ、その家に一生住むことが確定している人達に限った話。

※今確定していも、数年後には災害とかでなくなるかもしれないけど。

 

個人的には、賃貸の方が得だと思う。

本書では述べられていませんでしたが、賃貸の最大のメリットは、「家(土地、ローン)に縛られないこと」です。

 

いつでも好きな時に解約できるし、一度買ったら20年間ローンを払い続けなければならない、という制約もありません。

 

私は、年に(最大で)40万円税金が還ってくることよりも、

「いつでも別の家(場所)に住み替えられる自由」の方が、

圧倒的に価値が高いと思っています。

 

※単純に、欠陥住宅だったりご近所に変な人が越して来たりしても、

「逃げられない」というのはかなりのリスクだと思うのですが。。。

価値観の違いも大きいと思いますが、ちょっと正気の沙汰とは思えません。

 

 

著者は、税務署員も持家率がほぼ100%である、という事実から、

「税務署員は持家の方が得だと知っているから」と述べています。

 

いかにも税務署員の古典的な思想が匂ってきますが、

ハッキリ言って、税務署員も著者も視野が狭すぎると思います。

 

著者の理論は「ローンは(100%)期限通りに完済できる」という前提の上に成り立っています。この前提が崩れることを全く考慮していません。

 

こういう投資の仕方は世界ではNGです。

「不確定な未来」に対し、リスクを分散するためにポートフォリオを組むのは、投資の世界では常識です。行動経済成長まっただ中の日本は、「20年後にもらえる給料」はほぼ確定していたのでしょう。。。

 

しかし、今は違いますよね?

特に、20代、30代の若い世代は不安定です。

 

「未来は不確定で、10年先は予測不可能である」という前提に立つと、

「持っている資産の量(数)」よりも、

「変化に柔軟に対応できる身軽さ」の方が重要であると思います。

 

ちなみにこの本は、タイトルに惹かれて購入したのですが、

家族がいたり、いろんな保険を払っている人向けに書かれたものと思います。

私のように一人で生きている(生きていこうと思っている)人、

いずれ日本を脱出する気満々の人にとっては、

読んでも得られるものが少ないかもしれません。